「竹のビンテージ復刻版の開発」に関する共同研究
−平成18年度企業ニーズ対応型研究事業−
坂本 晃
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・大橋重臣 **
・中臣 一 **
・清水貴之 **
・廣瀬慶子 **
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竹工芸・訓練支援センター・ **
BAI CA
A J oint
Research Concerning "Development of
Vintage
Reprint
Version of
Bamboo"
Aki r a SAKAMOTO
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・Si geomi OHASHI
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・Haj i me NAKATOMMI
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・ Takayuki SHI MI ZU
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・ Kei ko HI ROSE
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Oi t a Pr ef ec t ur al Bamboo Cr af t and Tr ai ni ng Suppor t Cent er・
**
BI CA
要 旨
本研究事業 では,開発グループ BAI CA との共同研究との位置づけで,竹工芸・訓練支援センターが過去に開発保管してい
る埋もれたグッドデザインから復刻開発を行い,9種9点の試作品を製作した.
1. 目 的
別府竹細工は昭 和54年に ,大分県で唯一 ,伝 産 法に
基づき国の伝統的工芸品の指定を 受けている.
しかし,別府竹細工 は続く景気の低迷からの脱出を計
ろうと懸命に努力しているが ,長引く不況 と安価な輸入
竹製品などの影響により困難 な状況にある.
しかし,根底にある低迷の 原因は,変化してきた消費
者ニーズへの対応ができていないため,商品魅力の鈍化
が大きいのではないかと思われる.
し か し, 竹 工 芸・ 訓練支援 セ ン タ ーの 若手 の竹工技 術 者 を 育 成 し て い る 中 堅 技 術 者 養 成 研 修 の カ リ キ ュ
ラムは 加 工 技 術が中 心で あ る た め,若 い竹 工 芸 家 達の デ ザ イ ン能力 は,厳 しい市 場を 乗り切 るには 満足 なレ ベルにはなく ,新し い開発 デザインの 質お よ び量 に限
界が あ る. そ こ で ,竹 工 芸・ 訓 練 支 援セ ン ター が 過去 に開発 し,時 代を先 取りしすぎたため 日の 目を見 ず, 保管されている デザインか ら復 刻す る こ と に し,B A I CAに はそ の プ ロ セ スの 中 で高 度 なデ ザ イ ン力 および 技術力 を吸 収し レ ベ ル ア ッ プを 図り ,現在,一過性の
特注品が多いので,「普遍的価値」に留意した 定番商品
の開発 により 竹工芸産業 の振興 を図る .
また,従来とは異なる デザイン開発アプローチである
復刻版を開発する手法を探る .
2. 研究 内容
2. 1 製品開発の手順
開発の手順の全体像は ,Fi g. 1 製品開発 プロセスを参
照していただきたい.
復刻版開発 の問題点お よび対応策 を検討 した .竹工 芸・訓練支援センターの過 去の開発デザイン から選定し,
それを 現代の 消 費 者の生 活や嗜 好にあわせ リデザイン
を行うが,外部のデザイナー,流通の専門家 ,照明器具
メーカーとの連携を重視して 実施した.
Fi g. 1 製品開発の手順 2. 2 開発の問題点
復 刻 版 開 発 特 有の 問題点 がを 含む た め, どのような 手法・ シ ス テ ムに よ り解 決できるかを 検討 した.
特有 の問題点と は,埋 もれた デ ザ イ ンをどこからど
う入手するか,選定者 の個人的好みではなくマーケット
ニーズに合うデザインをどのように選定し,ま たリ・デ
ザインするかという2点で あ る.
埋もれたデ ザ イ ンをどこからどう 入手するか につい ては,過去の流通商品の デザイン,竹工芸・ 訓練支援セ
ンターの過去の開発デザイン 等が考えられるが ,モダン
なデザインが 多いことや 収集の 手間 やトラブル 回避か
ら,今回は後者にした.
どのように選定し,リデザインするかについては,成
否を分ける重要なポイントである,個人的 な好みに左右
ニーズ に詳し い専門家の 意見を 取り 入れるのが 有効で あろう.ただし,零 細 企 業では予算がないため,専門家 の意見を聞けない場合が多い .
その場合の有効な方法は,「デザイン開発プロセス 」
に沿って開発を行うことである.特に 「市場と消費者
のニーズ情報」を収集 し検討することと,「ターゲット
(購入想定者)の設定 」の具体的認識 を徹底させるこ とにより,自分の好みを越え た検討が可能である .
Fi g. 2 製品開発プロセスとポイント
2. 3 情報収集およびテーマ・アイテム設定
マ ー ケ テ ィ ン グ情 報の根 拠となるデータ は下記 のと おりである.
17 年度の新設住宅着工戸数 は 1, 249, 366戸.平成1 7年の新設住宅着工戸数 は前年比では 4. 7%増であり, 3年連続の増加.17 年度 の分譲住宅は 370, 275 戸で,
前年比 6. 0%増,3年連続 の増加.(国土交通省 建設調 査統計課 )1つの判断として,新設住宅の 増加は照明
器具需要の増加と言える.
2. 4 対象となるターゲットの想定
欧米 の先進的 デザイン で あ るイ タ リ ア モ ダ ン に代 表
される都会的インテリアを好 む人々. 自然素材に関心
のある 30 代以上の富裕層と し た.
Fi g. 3 ターゲットイメージシート
2. 5 コンセプトの確立
開発の基本コンセプトは下記 のとおりである.
普遍的価値を持つ竹製品を開 発する.
● 数十年という長い年月の間 ,市場に出続 けることがで
きるもの作りを,素材・技術・デザインな ど様々な面か
ら判断していく.
● 過去にデザインされたもので,現在でも 全くその価値
を失っていないもの,つまり普遍的価値を 内在するもの
を選定し復刻する.
● 新しい素材や別の伝統技術に置き換えることにより,
単なる復刻にとどまらない ,普遍的価値をさらに磨いた
新しいものとして現代に甦えらせる.
Fi g. 4 検討風景
2. 7 試作および考察
打ち合わせを行いながら,9 種9点の試作を行っ た. ( 1) FREE BOX
昭和44年に竹工芸・訓練支援センター( 旧別府産業 工芸試験所)でデザイン開 発された「ちり篭 」がベース で,形態を逆さまにしたバージョンも考案した.
コンセプトは,内側の底 板をカラー合板にし ,編組を
際だたせ,明るい雰囲気を 持たせた.小 物 入れやごみ篭
として使用する.モダンでさわやかなテイスト.
( 2) アプテニア
これは今回の復刻版開発の デザインではないが ,客員
研究員でもあるデザイナー城谷耕生氏による ,オリジナ
ルの新規デザインである .復刻版開発のご 指導で生じた
コラボレーションである.
コンセプトは別府温泉の噴気 で竹曲げ加工を行い ,縁
のない画期的な編組を生か し たウォールライトである.
地獄蒸 し と い う温 泉の噴 気を 利用し た料理法に 使う
噴気の竈で,型に入れ た竹の編組を蒸して 加工を行った
ものである.
Fi g. 6 アプテニア
( 3) UNI
昭和47年に竹工芸・訓練支援センターでデザイン開 発されたペンダント型照明器具.
コンセプトはウニの形態をモチーフに,ふっくらとし
たラインを強調した,ペンダント照明器具.
Fi g. 7 UNI
( 4) WAVE
昭和 53年 に竹工芸・ 訓練支援 セ ン タ ーで 開発され
た盛り篭.
コンセプトは縁を変形 させ波打たせた ,円形の盛り 篭である.イタリアの シンプルモダン なテーブルに合
うような,モダンでさわやかなテイスト.
Fi g. 8 WAVE ( 5) PET CARRY
昭和 55 年に 中堅技術者研修生 がデ ザ イ ン開発 した
もので,復刻にあたり開発 者本人に許可を得て ,さらに 加工上のノウハウ等も指導願 った.
コンセプトは以下のとおり .今やペットは 家族の一員
である.かわいいペットを 運ぶのに,プラスチック製で は味気ないし,おしゃれではない.こんなのがほしかっ
たと思わせる,キャリーバス ケット.( リデザイン 中)
Fi g. 9 PET CARRY ( 6) ハート(仮名)
これも復刻ではなく ,イタリアミラノで 活躍されてい
たデ ザ イ ナ ーの 城 谷 氏を 経由 し実 現し たコラボレーシ ョンで,イタリア建築界モダニズム最後の巨匠 ,アンジ
ェロ・マンジャロッティ氏から提案の新規 デザインを試 作したもの.
当初,ペンダント型照明器具として試作 を行っていた
が,フロア型ライトの検討も 行った.
コンセプトは竹の曲がる特性 を生かした,ハ ー ト型の
Fi g. 10 ハート(仮名) ( 7) OVAL
昭和 43年 に竹工芸・ 訓練支援 セ ン タ ーで 開発され
た盛り篭.コンセプト は,使う人がわくわくするよう な,シンプルでモダンな美し い形態の盛り器.
Fi g. 11 OVAL
( 8) BAMBOO HAT
コンセプトは,透か し網代編み に よ る,モダンで涼 しげな竹の帽子.
Fi g. 12 BAMBOO HAT
( 9) カサ(仮名)
これも復刻ではなく ,イタリア建築界モダニズム最後
の巨匠,アンジェロ・マンジャロッティ氏 から提案の新
規デザインを試作したもの.
コンセプトは竹の直 線 性を生かした, 傘型のシャー
プでモダンな形のペンダント 型照明器具.
Fi g. 13 カサ(仮名)
3. ま と め
本研究事業 では,加 工 技 術の ノウハウ に つ い て も,
当時の 開発者 の話を 聞くことができ, BAI CAの若手竹
工芸家 に と っ て貴重 な体 験であったと 思う .また ,客 員 研 究 員で あ るデ ザ イ ナ ー城 谷 氏のア イ デ アで別 府の 温泉噴 気を利 用した 成 形 法を開 発し た こ と も,すばら
しい成 果であった.
デ ザ イ ン開発 の手法 と し て,埋 もれた デザインの 復
刻と い う方法 には,問題点 もあるが解決方法 を検 討し,
少ない 努力で 大きな 効果 を上げることがで きるという ことが 確認できた. 今回 9種類 ,検 討 中も 含め1 0数
種類も 開発できた. もし ,復刻 で は な く一 からデザイ ン開発 し て い た ら そ の3 分の1 も開発 できていなかっ た だ ろ う.
問題点 とは,マーケットニーズ にしっかり 対応す る
には ,個人的好みをいかに排 除するかという点 である .
そのた めの有 効な 方法 は,「 市場 と消 費 者の ニーズ情
報」を収集し検討することと,「ターゲット(購入想定
者)の設定」の具体的認識を徹底させることであり,
それにより自分の好みを越え た検討が可能となる . 今後, 若い竹工芸家 の育 成お よ び起業 において復 刻 版開発 の手法 はたいへん 役に立 つと考 えられる.
商品化 したものに関 し て は,販 売ル ー トの 開拓が 今 後の重 要な課 題で あ る.竹工芸・ 訓 練 支 援センター とし